ドイツ、フリーランスの芸術家への現金給付まとめ (5月1日時点)

少し空いてしまいました。そんな間にいつのまにか4月が矢のように飛び去ってしまっていました。これまでの人生で一番短かった4月でした。

現時点でのフリーランスの芸術家への現金給付について、一旦まとめておきます。

イースター休暇が明けてすぐ、バイエルン州 (州都ミュンヘン) が州在住のフリーランスの芸術家に生活費としてひと月1000€、差し当たり3ヶ月分まで支給することを表明しました。バーデン・ヴュルテンベルク州に続いて大きな進展です。支給対象となるのは、KSKに登録している芸術家です。KSKとは、フリーランスの芸術家を支援するためのドイツ独自の社会保険制度です。KSKについては別記事でまとめていますので、詳しくはこちらの記事をどうぞ。ドイツではKSKはフリーランスの芸術家として公式に認知されるための基準のようなものだと捉えられていることから、バイエルン州は支給対象をそのように定めたと言っています。が、蓋を開けてみると、条件を満たせずにKSKに加入できていない芸術家もある程度の数いることが判明しました。そのような芸術家への対応がこれからの課題として挙げられています。

ニーダーザクセン州 (州都ハノーファー) では、州の貯蓄銀行が独自の基金を設立し、フリーランスの芸術家に一律で2000€支給することを表明。これは州や国の支援プログラムではありませんが、芸術家の助けになることには変わりありません。

つい一昨日、ザクセン州のライプツィヒの市議会もまた、フリーランスの芸術家に一律で2000€を支給すると発表しました。対象はライプツィヒ在住の芸術家に限りますが、ザクセン州最大の都市ですので、かなり多くの芸術家がこの恩恵に預かることになることでしょう。

特定の州や自治体に在住する芸術家に対しての生活費を対象とした給付金は、僕の把握している限り現時点で以上です。繰り返しになりますが、個人事業主に対して必要経費として3ヶ月で9000€までの給付は現在もなお受け付けられています。

その他、民間団体による独自の芸術家支援が大小様々ありますので一部紹介します。

ドイツの音楽界にはGVLという団体があります。これは日本で言うところのJASRACのようなものです。音楽家なら、ソリストでも指揮者でもオーケストラプレイヤーでも合唱歌手でも、あるいは音源を編集する音響技師もここに登録できます。自分が参加したプロダクションの音源や映像がラジオやテレビでの放送に使われた場合、放送局から音源使用料を徴収し、規定に基づいて演奏者に分配するという仕事を担っているのが、このGVLです。この団体は、新型コロナにより経済的影響を受けた登録音楽家に対し、一律で250€を支給しています。実を言うと、国の支援策があーだこーだと話し合われるよりとうの昔に、一番最初に音楽家に支援の手を差し伸べたのがGVLでした。3月の中旬くらいには既に支給を始めていました。

2017年ハンブルクにオープンしたコンサートホール、エルプフィルハーモニーは、そこでキャンセルされた本番に出演するはずだった芸術家に、最高2500€まで支援すると発表しました。歌劇場やオーケストラ、アンサンブル、合唱団などでも、本番が中止になってもギャラを支給しているところはありましたが、コンサートホールが主体になってやっているのは今のところ稀だと思います。

ドイツのオーケストラ連盟はスポンサー、専属団員、ファンなどから寄付金による独自の基金を設立しました。フリーランスの音楽家を対象に、現時点で2500名の申請者に400€ずつを支給したとのこと。これも結構早い段階で立ち上がっていて、3月中には申請と支給が始まっていたはずです。今後も、寄付で集まった金額に応じて、支給を進めていくとのことです。

それから、歌劇場について。再開の目処が立たない歌劇場では、専属団員がKurzarbeitという合法的な給料カットにより、子供のいる団員は普段の67%、子供のいない団員は60%まで減給される恐れがありました。それを防ぐためにモニカ・グリュッタースさんが率いる文化相が昨週から奔走し、市立の歌劇場 (Stadttheater) について、この4月から少なくとも12月までは90%100%の月給を保証できるようになりました。またこの規定は、専属歌手だけではなく、多くの客演歌手にも適用されます。国立や州立の歌劇場の専属団員の給料体制がどうなったのかは分かり兼ねます。市立歌劇場よりも国立や州立歌劇場は比較的経済的に恵まれていることが予想できるので、まず末端の方から手を打ったということでしょうか。


さてさてここで一旦コマーシャルです。自宅謹慎中に一曲録音してみました。クラウス・フーバー (1924-2017) 作曲、無伴奏男声独唱のための「Traumgesicht (1971)」です。



テキストは新約聖書のヨハネ黙示録に基づくものます。気に入っていただけましたら、YouTubeにアクセスし、高評価ボタンとチャンネル登録を何卒よろしくお願いいたします。今後の動画撮影へのモチヴェーションに繋がります。



最後に、ロックダウン緩和について。

ドイツでは420日から段階的にロックダウンが解除されています。店舗面積が800平米までの小売店 (服飾、家電製品、書籍、ホームセンターなど)、自動車やバイクのディーラー、 自転車屋、携帯電話の代理店などなどは、定められた衛生基準を遵守した上で営業が認められています。一部の州で義務化されていたマスクの着用は、いつのまにかドイツ全州に適用されるようになりました。ただし、着用義務の対象となるのは店に入る時や公共交通機関を利用する時であり、屋外を歩く分には無着用で構いません。

そして明後日、54日からは二段階目のロックダウン緩和が予定されています。子供達の遊ぶ公園、動物園や植物園、一部の美術館や博物館、コピーショップ、自動車教習所、美容院などなど

それに伴い、僕もついに音楽活動再開予定です。シュトゥットガルトの放送局のSWR声楽アンサンブルは、来週は8人~16人の小さい編成に分けてリハーサルを始めます。522日に32人の編成で無観客のコンサートをライブストリームすることが当面の目標です。が、全員が一堂に会することがその時点で認められるのかどうか、まだ分かりません。ひょっとしたら縮小した編成でライブストリームをする見込みも示唆されており、そうなったら残念ながら直前になって編成から外される可能性もあります。それでも32人編成でできる可能性が残されている限りは全員がリハーサルできるよう、全力かつプロフェッショナルにオーガナイズしてくださるスタッフさん達にはもはや頭が上がりません。

ライブストリームは日本からも視聴できるはずです。もし僕が出演できることになったら、ぜひぜひぜひとも皆さんご覧くださいね!というか、僕が出演できなくても見てください。ここのアンサンブルは聴いて損するはずがありません。日本時間なら、522日(金)の深夜25時、523日(土)の午前1時です。リンクは、日が近づいたらお知らせしますね。

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