新型コロナウイルス蔓延中のドイツでの生活 その2
その1はコチラ
前回の記事の投稿は6日前でした。それ以来の僕の音楽活動における大きな変化は以下の2点。
・再来週から始まる予定だったコレジウム・ヴォカーレ・ゲントによるマタイ受難曲のツアーは完全に中止されました。11ヶ国14都市の公演が全てキャンセル。訪れる予定だった街は、順にブリュッセル、ルクセンブルク、ケルン、バルセロナ、モスクワ、アムステルダム、インスブルック、ブダペスト、ミラノ、ハンブルク、パリ、ルツェルン、エッセン、ゲントでした。
・今週日曜日のSWR声楽アンサンブルの本番は、決行されるとしても無観客でライブストリームのみと告知されていましたが、今朝のメールで完全中止が通達されました。本番まではプログラムの録音を続けるはずでしたが、放送局への通勤が禁止ということでそれも中止。
前回の記事の投稿は6日前でした。それ以来の僕の音楽活動における大きな変化は以下の2点。
・再来週から始まる予定だったコレジウム・ヴォカーレ・ゲントによるマタイ受難曲のツアーは完全に中止されました。11ヶ国14都市の公演が全てキャンセル。訪れる予定だった街は、順にブリュッセル、ルクセンブルク、ケルン、バルセロナ、モスクワ、アムステルダム、インスブルック、ブダペスト、ミラノ、ハンブルク、パリ、ルツェルン、エッセン、ゲントでした。
・今週日曜日のSWR声楽アンサンブルの本番は、決行されるとしても無観客でライブストリームのみと告知されていましたが、今朝のメールで完全中止が通達されました。本番まではプログラムの録音を続けるはずでしたが、放送局への通勤が禁止ということでそれも中止。
要は、今日から復活祭までの予定が真っ白になってしまったというわけです。
ちなみに先週中旬の時点では、ドイツの多くの州で1000人以上が集まるイベントを中止すべきとの勧告がなされていました。その後、小中規模の演奏会類は頑なに上演中止となる事態を防ごうとしているように見えましたが、大きな歌劇場やコンサートホールが日を追うごとに、というよりもはや刻一刻と閉鎖を宣言するにつれ、中規模の演奏会、そして小規模なリサイタル類までが世相に流されて、中止もしくは無観客での上演を余儀なくされたというように僕には見えました。
本日緊急事態宣言を受けて、ドイツ政府が臨時の法律を制定しました。小中高等学校、大学、劇場、コンサートホール、美術館、博物館、図書館も閉鎖。教会の礼拝も中止。バーやクラブやジムも閉鎖。レストラン類は18時までの営業のみが許容されるようです。本番無くなってヒマだからカラオケバー行こうぜ、とか音楽仲間と言っていましたが、もちろん敢え無く計画頓挫です。ここまで徹底されるともはや清々しいです。
というわけで、向こう2週間に観客を入れて行われる演奏会は、ドイツではほぼ皆無だと思われます。僕が情報を得ている限りでは少なくともイタリア、スイス、オーストリア、ベルギー、オランダも似たような感じです。今日からはドイツは国境も閉鎖しました。
規模を問わずほぼ全ての演奏会類が中止されることにより、意図されたものかどうかは分かりませんが、フリーランスの音楽家の間では健全な連帯意識が自然に成立しています。出演機会を失って辛いのは他のみんなも同じですから。規模の大きいイベントは中止、小さいものは決行という方針が取られるならば、その時たまたま小さい本番の契約を貰っていた人がラッキー、大きい本番の契約があった人はアンラッキーということになるわけです。羨望、嫉妬といったネガティヴな感情は競争心を生み、全員が足並みを揃えることへのまさに足枷となります。何も戦時中というでも無いので、「欲しがりません、勝つまでは」のような偏った体育会的抑制心を刷り込ませる必要はありませんが、このような連帯感が自然に生まれていることは、不満や不平等から起こる暴動やパニックを最低限に抑えるためには有意義だと思います。
(この写真は、ボローニャです。記事の趣旨には全く関係ありません。正直なことを打ち明けますと、記事に最低一枚必ず画像を挿入しなければ、なんでか分かんないけどブログ全体の表示にバグが生じてしまうのです。コロナ関係の写真とか無いしな。しばしボローニャの美しい街並みをお愉しみ下さい。)
ベルギーやオランダの劇場・コンサートホールの多くは、演奏会の中止を差し当たり4月初旬まで、すなわち約2~3週間程度と発表し、状況の変化に応じて延長する可能性があると言っています。一方、ドイツの劇場・コンサートホールは、それより2週間も長く、4月19日まで閉鎖を表明しているところが多いです。団体によっては4月末までというところも。4月19日というと、イースター休暇の最終日なんですよね。労働者の休む権利に極めて厳しいドイツ人らしい決定です。どうせ休むならイースターもまたいでしまおうぜ、という発想なのでしょう。
コンサートを中止する代わりに、無観客上演でライブストリームされるものが多くなりました。そもそも聞きに行く予定でもなかった遠方での演奏会などが自宅で無料で聴けてしまうこともあり、むしろラッキー、なんてことも起こります。ベルリンフィルはもともと、過去の演奏会を有料で視聴できるプラットフォームを有していましたが、今回の事態を受け、それを無料開放しています。
公の場で握手やハグをすることが徹底的にタブー視されるようになりました。無観客上演のライブストリームでも、カーテンコールで指揮者がソリストを労って握手するのが自粛されています。オランダの政治家が会見で、現時点での情勢を踏まえて握手やハグの習慣を控えるよう呼びかけてスピーチを終えた後、うっかり隣りの人と握手してしまうという滑稽なニュースもあったり。これまでは握手を求められたら手を差し出すのが礼儀でしたが、今後は握手を求めることそのものが思慮に欠けていると見なされるようになるかもしれません。このまま握手の習慣が滅びてしまうのであれば、我々は古くからの欧州の文化が歴史的に変化する瞬間を目の当たりにしているのかもしれません。
学校や学童保育の閉鎖を受け、ある放送局は平日の午前中の番組表を大幅に変更しました。子供向け・ファミリー向け教育番組を多く放映するのです。家でじっとしていなければならない子供達が時間を潰せるように、そしてそれが少しでも授業の補填となるようにという配慮ですね。粋な計らいです。大人はNetflixかYouTubeでも見ておけば良いのです。
スーパーやドラッグストアでは、相変わらず消費者による買い占めが目立ちます。非常事態に対する過剰反応もあるでしょうが、ある程度は致し方がありません。仕事にもいけないし外食もできないなら、皆家で料理して食事するしかないのです。買い占めの傾向もそう長くは続かないと僕は楽観しています。各家庭に貯め込める量にも限度がありますから。いくつかの小売店は時短営業を始めましたが、それが目的に適っているのかは疑問です。来客数は変わらない(むしろ普段より多い)のに、それが短縮された時間に殺到するわけですから。
ドイツのある政治家は、ドイツにおける文化・芸術事業の経済発展への貢献度の高さを挙げ、今回大きなダメージを受けた芸術家達への経済的支援を必ず行うことを明確に表明しました。一方、別の政治家は「今、サッカーの試合に行くのと仕事に行くの、どちらが大切でしょう?私はサッカーに行けなくても仕事に行く方が重要です」などと発言し、スポーツ事業関係者や芸術家から大いに批判を浴びています。言いたいことは分かるけど言い方があるってもんです。こういった発言からどちらの政治家が芸術家達から賛同を得られるかは、火を見るより明らかです。普段ニュースを見ないような層の人達がこぞって注目しているということを、政治家達は意識する必要があります。
家で大人しくさえしておけば、余震に怯える必要もないし、爆撃される心配もないし、突然警察がやってきて理不尽に連行させられる恐れも無い。電気は通っているし水は流れるし食糧だって充分にある。そう考えると、緊急事態というものの、なんて平和なことでしょう。
SNSを眺めていると、今回の事態を受けて有用な情報からしょうもないデマ、皆を励ますジョーク、行き場のない怒り、挙げ句の果てには感傷のままに書かれたポエムまでが流れてきますが、その中で唯一僕が100%共感できたのが、短いスイス留学時代の恩師の一人の投稿でした。「今はみんなが、他の人のことを考える練習をするための時間です」と。
普段とは異なる状況だからこそ出来ることもあるし、新たな価値観で物事を見つめ直す機会でもあるし、人に会えないけれど様々な連絡手段でコミュニケーションをとるチャンスでもあるのです。相手もどうせヒマなんだから。休暇とは、始まったときは長いように思えても、いつも最後の数日で慌てて課題を片付け始めることになるものです。
本日緊急事態宣言を受けて、ドイツ政府が臨時の法律を制定しました。小中高等学校、大学、劇場、コンサートホール、美術館、博物館、図書館も閉鎖。教会の礼拝も中止。バーやクラブやジムも閉鎖。レストラン類は18時までの営業のみが許容されるようです。本番無くなってヒマだからカラオケバー行こうぜ、とか音楽仲間と言っていましたが、もちろん敢え無く計画頓挫です。ここまで徹底されるともはや清々しいです。
というわけで、向こう2週間に観客を入れて行われる演奏会は、ドイツではほぼ皆無だと思われます。僕が情報を得ている限りでは少なくともイタリア、スイス、オーストリア、ベルギー、オランダも似たような感じです。今日からはドイツは国境も閉鎖しました。
規模を問わずほぼ全ての演奏会類が中止されることにより、意図されたものかどうかは分かりませんが、フリーランスの音楽家の間では健全な連帯意識が自然に成立しています。出演機会を失って辛いのは他のみんなも同じですから。規模の大きいイベントは中止、小さいものは決行という方針が取られるならば、その時たまたま小さい本番の契約を貰っていた人がラッキー、大きい本番の契約があった人はアンラッキーということになるわけです。羨望、嫉妬といったネガティヴな感情は競争心を生み、全員が足並みを揃えることへのまさに足枷となります。何も戦時中というでも無いので、「欲しがりません、勝つまでは」のような偏った体育会的抑制心を刷り込ませる必要はありませんが、このような連帯感が自然に生まれていることは、不満や不平等から起こる暴動やパニックを最低限に抑えるためには有意義だと思います。
(この写真は、ボローニャです。記事の趣旨には全く関係ありません。正直なことを打ち明けますと、記事に最低一枚必ず画像を挿入しなければ、なんでか分かんないけどブログ全体の表示にバグが生じてしまうのです。コロナ関係の写真とか無いしな。しばしボローニャの美しい街並みをお愉しみ下さい。)
ベルギーやオランダの劇場・コンサートホールの多くは、演奏会の中止を差し当たり4月初旬まで、すなわち約2~3週間程度と発表し、状況の変化に応じて延長する可能性があると言っています。一方、ドイツの劇場・コンサートホールは、それより2週間も長く、4月19日まで閉鎖を表明しているところが多いです。団体によっては4月末までというところも。4月19日というと、イースター休暇の最終日なんですよね。労働者の休む権利に極めて厳しいドイツ人らしい決定です。どうせ休むならイースターもまたいでしまおうぜ、という発想なのでしょう。
コンサートを中止する代わりに、無観客上演でライブストリームされるものが多くなりました。そもそも聞きに行く予定でもなかった遠方での演奏会などが自宅で無料で聴けてしまうこともあり、むしろラッキー、なんてことも起こります。ベルリンフィルはもともと、過去の演奏会を有料で視聴できるプラットフォームを有していましたが、今回の事態を受け、それを無料開放しています。
公の場で握手やハグをすることが徹底的にタブー視されるようになりました。無観客上演のライブストリームでも、カーテンコールで指揮者がソリストを労って握手するのが自粛されています。オランダの政治家が会見で、現時点での情勢を踏まえて握手やハグの習慣を控えるよう呼びかけてスピーチを終えた後、うっかり隣りの人と握手してしまうという滑稽なニュースもあったり。これまでは握手を求められたら手を差し出すのが礼儀でしたが、今後は握手を求めることそのものが思慮に欠けていると見なされるようになるかもしれません。このまま握手の習慣が滅びてしまうのであれば、我々は古くからの欧州の文化が歴史的に変化する瞬間を目の当たりにしているのかもしれません。
学校や学童保育の閉鎖を受け、ある放送局は平日の午前中の番組表を大幅に変更しました。子供向け・ファミリー向け教育番組を多く放映するのです。家でじっとしていなければならない子供達が時間を潰せるように、そしてそれが少しでも授業の補填となるようにという配慮ですね。粋な計らいです。大人はNetflixかYouTubeでも見ておけば良いのです。
スーパーやドラッグストアでは、相変わらず消費者による買い占めが目立ちます。非常事態に対する過剰反応もあるでしょうが、ある程度は致し方がありません。仕事にもいけないし外食もできないなら、皆家で料理して食事するしかないのです。買い占めの傾向もそう長くは続かないと僕は楽観しています。各家庭に貯め込める量にも限度がありますから。いくつかの小売店は時短営業を始めましたが、それが目的に適っているのかは疑問です。来客数は変わらない(むしろ普段より多い)のに、それが短縮された時間に殺到するわけですから。
ドイツのある政治家は、ドイツにおける文化・芸術事業の経済発展への貢献度の高さを挙げ、今回大きなダメージを受けた芸術家達への経済的支援を必ず行うことを明確に表明しました。一方、別の政治家は「今、サッカーの試合に行くのと仕事に行くの、どちらが大切でしょう?私はサッカーに行けなくても仕事に行く方が重要です」などと発言し、スポーツ事業関係者や芸術家から大いに批判を浴びています。言いたいことは分かるけど言い方があるってもんです。こういった発言からどちらの政治家が芸術家達から賛同を得られるかは、火を見るより明らかです。普段ニュースを見ないような層の人達がこぞって注目しているということを、政治家達は意識する必要があります。
家で大人しくさえしておけば、余震に怯える必要もないし、爆撃される心配もないし、突然警察がやってきて理不尽に連行させられる恐れも無い。電気は通っているし水は流れるし食糧だって充分にある。そう考えると、緊急事態というものの、なんて平和なことでしょう。
SNSを眺めていると、今回の事態を受けて有用な情報からしょうもないデマ、皆を励ますジョーク、行き場のない怒り、挙げ句の果てには感傷のままに書かれたポエムまでが流れてきますが、その中で唯一僕が100%共感できたのが、短いスイス留学時代の恩師の一人の投稿でした。「今はみんなが、他の人のことを考える練習をするための時間です」と。
普段とは異なる状況だからこそ出来ることもあるし、新たな価値観で物事を見つめ直す機会でもあるし、人に会えないけれど様々な連絡手段でコミュニケーションをとるチャンスでもあるのです。相手もどうせヒマなんだから。休暇とは、始まったときは長いように思えても、いつも最後の数日で慌てて課題を片付け始めることになるものです。
ドイツは日本と違って…と思っていましたが、どこもいっしょですね。フェイスブックでシェアさせて頂きました。よろしくお願い致します。
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