ハイドン「天地創造」ツアー前編


現在、ハイドンのオラトリオ「天地創造」のツアー中。厳密に言えばツアーの中休み中です。

フランスのポワティエ、パリでそれぞれ公演が行われました。

1月31日 ポワティエ Theatre Auditorium de Poitiers

2月1日 パリ シャンゼリゼ劇場


聖書の創世記の第1章、神が7日間で世界をお造りになった物語がベースとされているので、一般的なオラトリオで物語を劇的にさせるのにお馴染みの破壊的な行為や事象の過程を後退させるような出来事が全幕を通して一切起こらず、音楽にも聴衆の心を高揚させる要素ばかりふんだんに盛り込まれています。アダムとイブが楽園を追放されるシーンまで書かれなくて心底良かった。台本作者は創世記だけでなくミルトンの叙事詩「失楽園」も参照したため、聖書の話なのに情景描写が詩的かつ、ときに心を奪われるような甘美ささえ醸し出すことも頷けます。優美に織り成された和声の畳み掛けに感極まって、歌いながら涙腺まで緩み始めた時には、前日にYouTubeで見たくだらないお笑いの動画でも思い出して気分を落ち着かせるようにしています。アダムとイブの楽園にお笑い芸人を登場させるのは誠に遺憾ですが、泣いてしまっては歌えませんので。

作品を褒めるだけで相当字数を費やしてしまいました。

プロジェクトのことを書きます。このプロジェクトもコレジウム・ヴォカーレ・ゲント。オーケストラは、コレジウムと同じくヘルヴェッヘ氏が音楽監督として率いるシャンゼリゼ・オーケストラです。

過去に合唱団が上演した作品を再演する場合、リハーサルの回数が極力抑えられるのが常です。コレジウムは同一の音楽監督のもとで50年もの歴史を刻んできたアンサンブルですから、有名どころの作品は全て再演であり、天地創造も例には漏れません。今回は、合唱だけのリハーサルが3時間、オーケストラとの合わせが3時間、ゲネプロ、そして本番という超省エネ省予算最短コースでの準備期間でした。僕は最後に歌ったのは5年半前で、中にはすっかり「こんなんあったっけ?」というほどすっかり記憶から抜け落ちていたナンバーもあったのです。それでも、3時間リハーサルした後にはしっかり身体が思い出してくれていました。人間は脳の本来の機能の1割しか使わずに生きているとか言うじゃないですか。残りの9割の領域にこういうデータが保存されていて、必要に応じて取り出して使用するって、こういうこと?きっと。

3日間のオフを挟んで、残りはイタリアのモデナ、ポーランドのカトヴィツェで本番です。


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