バッハアカデミー in ブルージュ


先週からベルギーの水の都、ブルージュに滞在しています。バスターミナルのすぐ側のコンサートホール、コンセルトヘボウでは第10回バッハ・アカデミーが開催され、そこで2つのプログラムを歌わせていただきました。アンサンブルは、今年結成50年を迎えるコレジウム・ヴォカーレ・ゲントです。



1月17日・19日 ブルージュ・コンセルトヘボウ


1つ目のプログラムはメンデルスゾーン。

F. Mendelssohn:
O Haupt voll Blut und Wunden
Jesu, meine Freude
Wer nur der lieben Gott lässt walten
Verleih uns Frieden
Mitten wir im Leben sind, Op. 23-3
Psalm 115, Op. 31

ドイツで活躍している作曲家が皆多かれ少なかれバッハの影響を受けていると言っても過言では無いほど、バッハが後世の音楽家に与えた影響は絶大でした。メンデルスゾーンもその例に漏れず、コラールカンタータ、モテット、聖歌詩篇など、宗教的歌詞を扱った比較的演奏機会の少ない作品にその影響が色濃く反映されています。今回はその中から、合唱とオーケストラの作品を5曲と、無伴奏合唱の作品を1つ演奏しました。

2つ目のプログラムはバッハのカンタータ。

J. S. Bach:
Es ist dir gesagt, Mensch, was gut ist, BWV45
Jesu, der du meine Seele, BWV78
Laß, Fürstin, laß noch einen Strahl, BWV198
Melchior Franck: Herr, wenn ich nur dich habe

今回のバッハアカデミーのテーマは「Chez Bach」、すなわちフランス語で「バッハの家で」と冠され、バッハのプライベートの人生を垣間見ることのできるような教会カンタータを2つと世俗カンタータ1つを我々のシェフ、ヘルヴェッヘ氏がセレクトしました。ヘルヴェッヘ氏とのリハーサルは、バッハの作品ではテキストと音楽が必ず密接に関連しているという点から出発します。バッハの演奏は単純な作業では全くありませんが、テキストの内容をきっかけに音楽の難解さを紐解いていくことで腑に落ちるところまで解釈を自然に深めるという楽譜の読み方を、彼とのリハーサルを経て学んでいるような気がします。以前にも書いたかもしれませんが、古楽の分野では僕はドが付くほどの初心者なので、古楽スペシャリストの蒼々たる顔ぶれに紛れてバッハを演奏するのはかけがえのない経験であり、ブルージュでも刺激に満ちた日々を送っています。

コレジウムは2つの本番を終え、今日でバッハアカデミーは閉幕しました。オフ日を挟んで、明後日からはバッハのプログラムを引っさげてパリ、フランクフルトへ出張公演へ行き、その後アムステルダムでこのプログラムを録音します。旅はまだ続きます。


ところで、冒頭で触れたようにブルージュはベルギーの水の都とも呼ばれ、世界遺産にも登録されている歴史地区の周りが水路でぐるりと取り囲まれています。僕は、暖かい季節になると気が向いた時だけ走りに出るにわか素人ランナーで、心地良く走れるジョギングコースを見つけることもプロジェクトやツアーで未知の街を訪れた時の密かな愉しみの一つです。ブルージュの水路沿いの遊歩道は、素人ランナーにまさにうってつけ。高低差はほぼゼロだし、一周で8.5キロという距離もちょうど良いし、なんといっても、古都の街並みや可愛らしい歴史的建造物を脇に見ながら走れるコースはここにしかありません。


現在のキロメーター位置を示す標示が1キロ置きに立っていて、ペース配分にも役立ちます (写真右下)。


こんな枯れ木達の佇まいさえも様になる街、ブルージュ。

唯一の難点は、今の季節は空が常に雨雲に覆われ、太陽がほとんど顔を見せないことです。今日はついに晴れ間が見えたので、朝のゲネプロと夜の本番の間にここぞとばかりにひとっ走り。視覚的にも癒しを得られるコースなので、気がつけば8.5キロの距離が過ぎ去っていました。僕はパリへ発つ前に明日1日ブルージュでオフなので、晴れ空よもう少しの間踏ん張っておくれ。

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