歌い初めはヤナーチェク、マルタン、デュリュフレ





あけましておめでとうございます。本年もこのブログをご贔屓に何卒どうぞよろしくお願い申し上げます。

僕は早速、歌い初めています。ルール地方(20世紀にルール工業地帯として発展した地域)を拠点に活動する合唱団、コーアヴェルク・ルーアのプロジェクトで、3つの合唱作品に取り組んでいます。

L. JANÁČEK: Otche Nash für Solo Tenor, gemischten Chor, Harfe und Orgel (1906)
F. MARTIN: Messe für zwei vierstimmige Chöre a cappella (1922)
M. DURUFLÉ: Requiem op. 9 für Solisten (Mezzosopran, Bariton), gemischten Chor und Orgel (1947)

一曲目はレオシュ・ヤナーチェクの「Otche Nash 天にまします我らの父よ」。テキストはチェコ語です。チェコ人のヤナーチェクがポーランドの画家Męcina-Krzesz8枚からなる連続絵画にインスパイアされ、そのうちの5つをモチーフに書いたテノールソロ、ハープ、オルガン、混声合唱のための小品です。タイトルと冒頭の歌詞はカトリックの主の祈りと一致しますが、日々の糧に困窮する農民が神の救いを訴える様子が土臭くかつ素朴に描かれていて、神聖さや壮麗さが印象的な一般的な宗教曲とは全く異なります。

フランク・マルタンの「ミサ」は二重合唱のためのアカペラの作品です。近現代のアカペラコーラスはこの合唱団の得意とする分野で、今回も短いリハーサル期間で音楽的に極めて難易度の高いことを成し遂げられたと思います。グレゴリオ聖歌をベースとした印象派的なハーモニーが進行する中、突然ジャジーに崩れたり、かと思えばルネサンス期のマドリガーレ風にスイングし始めたりと、音楽の様式がころころと変化するのが聞きどころです。

モーリス・デュリュフレの「レクイエム」はメゾソプラノとバリトンの独唱、合唱、オルガン伴奏(オーケストラ版もあります)のための作品です。水面にポタポタと落とした水彩絵の具がゆっくりと時間をかけて拡がり、異なる色と交わり、他の色彩を構成していくような、絵画的でありつつ抽象的で動的な和声変化が特徴的です。

僕は日本にいた時は室内合唱という分野に全く縁が無かったため、今までに知らなかったこのような素晴らしい合唱作品に触れ合うたびに感銘を受けると同時に、どうしてもっと早くこの曲と出逢わなかったのかと少し後悔の気分も覚えます。

4日間のリハーサルはあっという間に過ぎ去り、ヴッパータールにて明日、ボートトロープにて明後日、2度の本番があります。プロジェクトの最終日までみんな風邪をひかず健康に歌いきることができますように。

コメント

人気の投稿